「すごいね、北海道」見上げた空は、目に痛いぐらい青かった。不純物が何も入ってないソーダ味のゼリーのようだった。
日本語でいいんだ。安全なんだ。そう思うと、体がフワッと浮き上がって青空の中に溶けていくような気持ちになった。
何を話しているか知りたい気持ちともう見ないという気持ちが、心の中でごつごつとぶつかった。
ノドが渇き、ベロの奥が張りつくような感覚がする。脚がざわざわと震え始めた。風が顔に吹きつける。ここから飛び下りさえすれば、やっと楽になれる。
胃の奥が猛烈に痛くなってきた。体が小刻みに震え始めた。ノドが渇ききって、ベロの奥とノドがくっついた。
母親のからみつくような視線を無視して、部屋に駆け込んだ。ベッドに仰向けに寝ころがり、天井を見つめた。
佐々木は操縦席に乗り込み、首にかけた川島中尉の遺骨箱を傍に置いた。目の前では、さまざまな計器が深海魚のように、弱い、冷たい光を放っている。