意味は?
ただでさえ午後一番の審理は鬼門だ。窓すらない無味乾燥な密室をいいように睡魔が闊歩(かっぽ)する。
よーし、やってやる。高橋先生に褒められてもらえるような、凄い曲を書いてやる! そう心に誓いながら廊下を闊歩(かっぽ)した。
未来の医師たちが闊歩(かっぽ)するのを眺めながら、勇作はほろ苦い気分を味わっていた。
二人は風格を感じさせる慶明大学の正門をくぐっていた。夏休みに入っているにもかかわらず、多くの学生がキャンパス内を闊歩(かっぽ)している。
「それより、丹野さんはどうした?」
気を取り直してきいた。深瀬は顔をしかめて言った。
「開発から外されて、今はぶらぶらなさっています」
「ぶらぶら?」
「ええ、開発技師という肩書ですが、いずれどこかに転勤になるという噂です」
胸が痛んだ。
「ときたま廊下で顔を合わせますが、以前のような覇気がありませんね。それに引き替え、うちのあの男はいい気になって闊歩(かっぽ)していますよ」
東和銀行の開発業務で設計ミスを犯した男の名を挙げて、深瀬は軽蔑したように口許を歪めた。