大いにおそれること。おそれかしこまること。 「 -して近寄らず」 「 -の念を与える」
自然災害に感じる恐怖というのは詰まるところ地球という巨大な生き物に対する畏怖(いふ)だ。普段は穏やかな海、山、そして空と大地。それらが一瞬にして凶暴な怪物となって牙を剥くその変貌ぶりに人間は恐怖するのだ。
首の後ろがちりちりする。何をどう弁解しても良然には見透かされているような畏怖(いふ)を覚える。
こうして情報収集をしていると、ネットの広大さをより思い知ることになる。利根はキーを叩きながら畏怖(いふ)する。
「彼らは世界で一番、勤勉で、勇敢で、優秀な民族にちがいない。この焦土を見れば誰も信じはすまいが、私は彼らを畏怖(いふ)している」
神奈川県警の警視、巻島史彦にとって、そんな畏怖(いふ)にも似た感情を抱いた最初の相手は、数年前に出会った[ワシ]だった。
「鬼のゾノせん」として誰もが恐れ、誰もが一目置いていた。大人なんて全員ナメてかかっていた野百合も、彼のいささか人間離れした強靭さには畏怖(いふ)を覚えていた。
七尾ほど、ヒートを畏怖(いふ)していない人間の耳には単なる勝利宣言にしか聞こえないこと、そしてその種の言葉には必ず反感を抱く人間がここにいることを ー。
デビューして今年で五十年だと聞いている。その間、どれほど節制して暮らしてきたのかと思うと、頭が下がるというよりも、超人的な強さを感じて畏怖(いふ)の念すら抱いてしまう。
桜田は入ってきた三人の顔を順番に見た。どの顔も顎が上がっていて、桜田を見下げている。周囲に畏怖(いふ)を与えようと胸を張りそして、自信に満ちている。
桜田は南城の切れ長の瞼、その奥の揺るがない瞳を直視するのが苦痛だった。南城の職責はそれ自体、桜田に充分畏怖(いふ)を与える。南城の瞳は、桜田が見たことのないものをすべて見てきたかのようだ。
ふみは侑也に畏怖(いふ)を感じていた。彼は底の知れない薄気味悪さをまとっている。
晴れて元の生活に戻ると、新しい自分に生まれ変わっていた。周りの視線が違っていたのだ。それは軽蔑であり、畏怖(いふ)であっただろうが、どちらにしても普通の人間を見る目ではなかった。
この頃になると、了児への恋心はすっかり畏怖(いふ)の念に蝕まれていたのだという。
そう思うたびに、暗闇の中、ふとんにくるまって、安は身震いをした。畏怖にも似た感動が体を震わせたのだ。
福原副院長は特別な存在だ。若くして外科のエースであり、また七十字系病院を束ねるドン、福原欣一朗の一人息子でもある。権力を背景にした発言力は強く、部長ですら彼の機嫌を窺っている。赤園たちは若手医師からすれば、憧れの存在であると同時に、畏怖の対象でもあった。