氏原は細い目に、商売人特有の狡猾な光を宿らせた。 東野圭吾さんのマスカレード・ナイト

口に当てていた手を下ろし、仲根緑は虹彩の色が薄い目を尚美に向けてきた。すごい、囁くように声を漏らした。 東野圭吾さんのマスカレード・ナイト

「ミッションは無事に完遂できましたか」頭の上から声が降ってきた。頭を上げると新田が立っていた。 東野圭吾さんのマスカレード・ナイト

いつも通りに能勢が缶ビールを手に取ってから、お疲れ様っ、と三人で声を掛け合い、それぞれのプルタブを引いた。夜中のオフィスに、炭酸の弾ける音が響いた。 東野圭吾さんのマスカレード・ナイト

「その勿体をつけた様子から察すると、何か掴んだんてすね」新田は曲者刑事の顔を覗き込んだ。 無表情だった能勢の口元が、ゴムボールの空気が抜けるように緩んだ。「まだ何ともいえませんがね」 東野圭吾さんのマスカレード・ナイト

「ありがとうございます」胸に滞留していた塊が、すっと消失する感覚があった。代わりに大きな安堵感が広がった。 東野圭吾さんのマスカレード・ナイト

新田は尚美に口を挟む暇を与えず早口でまくしたて、射すくめるような鋭い眼光を放ってきた。まるで獲物に食いついた猟犬のようだ。こういう時は、やはり刑事だなと思う。 東野圭吾さんのマスカレード・ナイト