人生も後半戦! これから先も楽しもう!

人生も後半戦になったら、これまでの生き方に後悔することもあります。しかし、後悔しても仕方ない。この先楽しく生きるためにいろんなことに挑戦

2020-10-20から1日間の記事一覧

父は筋張った大きな掌を挙げた。痩せた長身のたたずまいは

電車が動き出すと、父は筋張った大きな掌を挙げた。痩せた長身のたたずまいは、雨にしおれた柳の古木のように、哀しくあやうかった。 浅田次郎さんの椿山課長の七日間より

街路樹とグリーンベルトを贅沢に調(あつら)えた道路は渋滞することがなく

しかし多くの住人たちにとって、思惑のはずれた都市計画はむしろ好ましかった。街路樹とグリーンベルトを贅沢に調(あつら)えた道路は渋滞することがなく、公園は多すぎるほどで、休日に家の周辺を散策していると、いかにも支払った税金を取り返しているとい…

通い慣れた並木道が続く。プラタナスの葉に風が渡って、Tシャツの肩を滴が濡らした

通い慣れた並木道が続く。プラタナスの葉に風が渡って、Tシャツの肩を滴が濡らした。 浅田次郎さんの椿山課長の七日間より

憤りとはうらはらに三日月のような目をしていた

酔っぱらいの夫を介抱するときでさえ、憤りとはうらはらに三日月のような目をしていた。 浅田次郎さんの椿山課長の七日間より

明晰な表情がふいに毀(こわ)れた。奥歯が軋むほどに唇を引き結び、きっかりと椿を見据えたまま陽介は答えた

「どこも悪くない人が、どうして病院にいるのかしら」 明晰な表情がふいに毀(こわ)れた。奥歯が軋むほどに唇を引き結び、きっかりと椿を見据えたまま陽介は答えた。 「おばさんのことはよく知らないけど、ぼくはおじいちゃんと約束をしました。男と男の約束…

瞼は三日月の形に和んでおり、口元には微笑が戻っている

妻は気を取り直したらしい。瞼は三日月の形に和んでおり、口元には微笑が戻っている。喪服姿の妻のしとやかな美しさに、椿は見惚れた。 浅田次郎さんの椿山課長の七日間より

庭先からさし入る初夏の陽光が、ややコンケープされた喪服の肩を隈取っている

いい女だ、と椿は妻を見つめた。喪服は女性を最も美しく見せるという説は本当である。庭先からさし入る初夏の陽光が、ややコンケープされた喪服の肩を隈取っている。正面玄関の案内所に座っていたときと同じ姿勢で、美しい妻は凛と背筋を伸ばしていた。 浅田…