人生も後半戦! これから先も楽しもう!

人生も後半戦になったら、これまでの生き方に後悔することもあります。しかし、後悔しても仕方ない。この先楽しく生きるためにいろんなことに挑戦

2020-06-11から1日間の記事一覧

小説の書き出し 柚木裕子さんの最後の証人より

最後の証人 「佐方貞人」シリーズ (角川文庫) 作者:柚月裕子 KADOKAWA Amazon 緑色のワインボトルが、床に落ちた。 半分ほど残っていた中身が、瓶の口から波打って溢れ出す。毛足の長いグレーの絨毯に、赤い染みが広がる。 床にはワインボトルのほかに、肉片…

目じりの皺は深く、はだけたバスロープから覗く乳房は、張りを失っている

若くない女性の表現 女は、もう若くない。目じりの皺は深く、はだけたバスロープから覗く乳房は、張りを失っている。身体の線もかなり細い。華奢を通り越し、病的にさえ見える。 柚木裕子さんの最後の証人より

声は水の中で聞いているように、くぐもっている

寝ている時に聞こえる声の表現 先生。 誰かが呼んでいる。 先生、起きてください。 声は水の中で聞いているように、くぐもっている。 もう少し寝かせてくれ。そう言いかけたとき、額に氷を置かれたような冷たさを感じた。 柚木裕子さんの最後の証人より

ニコチンが肺を満たす

煙草で満たされる表現 佐方はジャケットの内ポケットから、煙草を取り出した。口にくわえて火をつける。ニコチンが肺を満たす。最近、どこもかしこも禁煙で肩身が狭い。ゆっくり煙草が吸える店はありがたかった。 柚木裕子さんの最後の証人より

湿り気を帯びた大気が、半袖のシャツから出ている腕にまとわりつく

湿度の高い暑い表現 時計を見ると、まもなく七時になろうとしていた。湿り気を帯びた大気が、半袖のシャツから出ている腕にまとわりつく。ひと雨くるな。そう思いながら、車のエンジンをかけた。 柚木裕子さんの最後の証人より

缶のプルタブを開けて、そのまま呷る。喉をひりつくような刺激が落ちていく。

ビールが喉をとおる時の表現 ダイニングテーブルの上に冷えたビールが用意されていた。 缶のプルタブを開けて、そのまま呷る。喉をひりつくような刺激が落ちていく。頃合いを見計らったように、美津子がつまみを持ってきた。益子焼の器に、茄子の煮浸しが盛…

目鼻立ちは小ぶりで決して派手ではないが、配置のバランスがよく品のいい顔立ち

若いが落ち着いた品のある女性の表現 兄の横で頭を下げる美津子は、実際の年齢より上に見えた。落ち着いた物腰と、流行りものではない落ち着いた服装がそう見せたのかもしれない。目鼻立ちは小ぶりで決して派手ではないが、配置のバランスがよく品のいい顔立…

メタボリックの見本画像が撮れそうな腹回りをしている

太った女性の表現 法壇の前にある証言台には、ひとりの女性が立っていた。年は五十歳前後。MRIに入れば、メタボリックの見本画像が撮れそうな腹回りをしている。前で閉じたグレーのカーディガンのボタンが、いまにも弾け飛びそうだ。 柚木裕子さんの最後…

不起訴、という字に胸が激しく波打つ

怒り出てくるの表現 光治は床に落ちて、しょうゆで汚れた紙を拾いあげた。もう一度、文面を読み返す。不起訴、という字に胸が激しく波打つ。 何故だ! 心で叫ぶ。 柚木裕子さんの最後の証人より

くたびれたスーツに、捩れたネクタイ、ごま塩のひげが中途半端に伸びている

やさぐれた男の表現 後ろを振り返ると、ひとりの男が立っていた。五十はとうに回っているだろうか。くたびれたスーツに、捩れたネクタイ、ごま塩のひげが中途半端に伸びている。寝起きのような風貌だ。 柚木裕子さんの最後の証人より

むらなく染めた栗色の髪を、後ろできれいにまとめあげている

裕福な女性の表現 むらなく染めた栗色の髪を、後ろできれいにまとめあげている。太り気味の身体は上質なスーツに包まれ、首や耳には、見るからに高価そうなアクセサリーがぶら下がっている。豊富にある財産と時間で、人生の余暇を楽しんでいる類いの人種だ。…