私鉄N駅の改札を出た三日月顎の若い男は、額に手を翳して顔をしかめ、やおらTシャツの裾を捲り上げて胸の近くまで素肌を晒した。その半裸の姿のまま陽炎揺らめく駅裏の舗道をだらしなく歩き、ガードレールに沿って横一列にひしめく放置自転車に目を向けるや、周囲を窺うでもなく、鍵の壊れた一台に手を伸ばした。
私鉄N駅の改札を出た三日月顎の若い男は、額に手を翳して顔をしかめ、やおらTシャツの裾を捲り上げて胸の近くまで素肌を晒した。その半裸の姿のまま陽炎揺らめく駅裏の舗道をだらしなく歩き、ガードレールに沿って横一列にひしめく放置自転車に目を向けるや、周囲を窺うでもなく、鍵の壊れた一台に手を伸ばした。