自然の描写をおすすめ小説から学ぶ
アフリカ最高峰のキリマンジャロが、姿を現したのだ。
白い王冠のような万年雪が山頂を縁どり、その頂きから長い裾をひくように稜線が拡がり、山腹に白い雲がたなびいている。その美しさは、さながらクイーン・エリザベスのような気品と威厳に満ちている。
濃厚なブルーの空に、雪山のような雲が動き、果てしない草原に、灼けつく太陽の陽炎が波打っている。視界を遮る何ものもない。
近くに沢が流れていて、遠目にも水が澄んでいるのがわかる。近づくと、小さな蟹が岩の上を横切るのが見えた。奥には雑木林が広がっている。
樹々が生い茂っていて、まるで深緑色のトンネルにすっぽりと包まれたみたいだった。フロントガラスから空を見上げると、葉の隙間から夕焼けに染まった空が見えた。
どこかで鳥が鳴く。風がススキを揺すり寂しい音を立てた。川の流れはごく細く、はっきりと分かる水音は聞こえてこない。
急峻な山々に囲まれ、空が狭い。谷の間を細い川の流れが続く。ここまで散々桜田を苦しめた未舗装の道は、冬枯れた雑草の侵食を受けている。
車を降りて角力灘(すもうなだ)に沈む夕陽を岸壁に並んで眺めた。見る見るうちに青い海が紅色に染まっていく。天国にいるのではないか。海に浮かぶ島影が幻想的で美しく、この世の物とは思えなかった。
目の前を、信濃川がゆるゆると流れる。少し濁った水は、幅三百メートルの茶色い布を広げたように見えた。
おれは改めて周りに目をやった。丘や谷が薄い闇の中に沈んでいる。手前に広がっているのは何かの畑らしい。
雨晴海岸に行った。波穏やかな白浜の海岸で、天気がいいから海の向こうに立山連峰が、城壁のように鮮やかに立ちはだかっているのが一望出来た。