自然の描写をおすすめ小説から学ぶ
駅からの道は、舗装されていない田んぼの中の一本道だ。まわりに建物らしいものはなにもなく、田んぼを渡ってきた風が、田植えの終わったばかりの一面の苗を波立たせて、また吹き渡っていく。 99のなみだ・蛍
お屋敷の塀ごしに、欅(けやき)や銀杏の大樹がうっそうと枝を伸ばし、石畳のゆるい坂道の空をすっぽりとおおいかくしていた。 浅田次郎さんの鉄道員(ぽっぽや)より
花が終われば、若々しい萌黄色の葉がいでて、目にもさわやかな風景へと移り変わる。 桜の若葉は、徐々に色濃い緑の影を落とすようになっていた。 原田マハさんの奇跡の人より
東条も、航空機関士も、オーロラに見惚れた。空気が薄いため、地上で見るほど色ははっきり見分けられないが、黄色と、僅かにピンクがかった壮麗な光のカーテンが、漆黒の闇に揺れている。飛行機の遥か上空で発生しているオーロラが、手を伸ばせば届きそうな…
アフリカ最高峰のキリマンジャロが、姿を現したのだ。 白い王冠のような万年雪が山頂を縁どり、その頂きから長い裾をひくように稜線が拡がり、山腹に白い雲がたなびいている。その美しさは、さながらクイーン・エリザベスのような気品と威厳に満ちている。 …