高く澄みきった空に、鱗雲が浮かび、秋風がたつ季節になった。
大通りに足を踏み入れた。また残暑がぶり返していたが、日が傾くとジャケットに袖を通したくなる。ようやく本格的な秋がやって来ていた。
ようやく秋らしくなり始めた柔らかな光が部屋に満ちている。彼女のなめらかな頬や腕の産毛が白く輝いていた。
道の両脇は、銀杏の葉の黄色い絨毯が敷かれている。季節の移ろいを肌で感じるのは久しぶりだった。
秋が深まり、虫の声が哀調を帯びはじめた。
午後六時を過ぎ、ようやく夏の陽が終わりの気配を微かに醸しはじめる。
窓から忍び込んでくる風は、ぼくらの産毛をさらりとなでていった。幽かに秋の匂いをはらんだ切ない感触の風だった。