日暮里の裏通りを吹き抜ける風に、かすかに秋の気配が感じられるようになった。上野の桜並木は、夏の盛りを過ぎて、力強い緑の繁りが少しずつ色あせはじめていた。 原田マハさんのリーチ先生

空は青く、空気は程よく乾いている。秋の行楽を楽しむには最高だろう。 東野圭吾さんの希望の糸

屋敷の外では、最後の力を振り絞る蝉の声と多数派を占める鈴虫の声が入り乱れていた。 田中経一さんのラストレシピより

九月も中旬を過ぎた土曜日は、夏の暑さが完全に息をひそめたような静かな夜となった。 瀬尾まいこさんのそして、バトンは渡されたより

秋のはじめの、ちょうど一年前に直子を京都に訪ねたときと同じようにくっきりと光の澄んだ午後だった。雲は骨のように白く細く、空はつき抜けるように高かった。また秋が来たんだな、と僕は思った。 村上春樹さんのノルウェイの森より

黒い瓦屋根やビニール・ハウスが初秋の日を浴びて眩しく光っていた。 村上春樹さんのノルウェイの森より

ようやく夏の熱気が遠ざかり、庭の木々に初秋の風が訪れているのを感じる。ツイイ、ツイイとシジュウカラのさえずりを耳にしながら、さわやかな気分で表門へと向かう。 原田マハさんの総理の夫より

銀杏の黄色が目に眩しい。あまりの光景に、ため息しかこぼれなかった。赤やオレンジ、黄色や黄緑の葉っぱが、視界いっぱいに広がっている。 小川糸さんのキラキラ共和国より

冷たく乾いた風が堅く踏み固められた地面を撫でていく。その風にあおられ、小さな砂利に混じって、とうに枯れ果てて茶色くひからびた木の葉が、微かな音を立てながら逃げるように転げ回っていった。日が陰ってきた頃から、急に風が強くなった。 乃南アサさん…

九月の初め。蓼科の空には、すでに秋の気配が漂っている。 暑かった夏の熱気を洗い流すように、青一色の中空をうろこ雲が横切っていく。その空を背景に、八ヶ岳の峰々が青くかすんでそびえ立っている。 原田マハさんの生きるぼくらより

銀杏の葉が黄色く染まって、歩道の端々に吹きだまっている。 雫井脩介さんのクローズド・ノート

ようやく、秋の日曜日に相応しい、ゆったりとした時間が二人の間に流れ込できた。 雫井脩介さんのクローズド・ノート

兵庫県の六甲山は、中腹から紅葉がはじまっていた。 赤松に混って、枝を広げている楓(かえで)、山桜、櫟(くぬぎ)などの落葉樹が色づき、深まる秋の山容を彩っている。国見は行き交う車が一台もない表六甲ドライブウェイを登って行きながら、久しぶりに心が和…

部屋のカーテンを開けると、眼下にセントラル・パークが拡がっていた。曇り空の間から薄陽が射し、落葉樹はすでに黄色や薄茶に変りはじめていて、緑の色は乏しい。それでも鳥が、樹々の間を飛び交っている。枯葉の間には、冬眠を備えて木の実を拾うリスがい…

窓の外に目を向けると、たわわに実った稲の穂が、夜の闇の中で頭を垂れて風にそよいでいた。 垣谷美雨さんの結婚相手は抽選でより 結婚相手は抽選でposted with ヨメレバ垣谷美雨 双葉社 2014年06月10日 楽天ブックス楽天koboAmazonKindle7net ebookjapan

高く澄みきった空に、鱗雲が浮かび、秋風がたつ季節になった。 山崎豊子さんの沈まぬ太陽より 大通りに足を踏み入れた。また残暑がぶり返していたが、日が傾くとジャケットに袖を通したくなる。ようやく本格的な秋がやって来ていた。 三上延さんのビブリア古…