車の表現、描写をおすすめ小説から学ぶ
紺碧の海を背景にして、モンテカルロの市街を見渡す小高い丘の坂道を、黒塗りのジャガーXJが滑るように進んでいく。 原田マハさんのアノニムより
街を東西に貫く国道を見下ろした。制限速度を無視して行き交うトラック、冷たい闇を単眼のヘッドライトで切り裂くオートバイ、赤色灯の血の色を撒き散らしながら走るパトカー。 堂場瞬一さんの長き雨の烙印より
綿雪の降りしきる中に、救急車が停まっていた。回転する赤いランプが煽り立つ炎に見えて、永山は立ちすくんだ。 浅田次郎さんのおもかげより
客待ちのタクシーの長い列が、夜の底に沈殿していた。一輝はその一台に乗り込むと「ハイアットリージェンシーまで」と行き先を告げた。 原田マハさんの異邦人(いりびと)より
道路脇には除雪された雪がこんもりと積み上がっている。ぜいぜいと荒い呼吸をするように、軽自動車はエンジン音を唸らせて山道を登っていった。 原田マハさんの生きるぼくらより
ふたりを乗せた軽自動車は、真っ暗な山道に入っていった。 車が進む道沿いには街灯もない。ヘッドライトが目の前の闇を切り裂くようにして進む。すれ違う車もなければ、通行人などいるはずもない。 原田マハさんの生きるぼくらより
千代子が草介と選んで買ってくれた交通安全のお守りが、縄跳びをするように跳ねている。 小川糸さんのにじいろガーデンより
真夜中の青山通りを、椿はあてどなく歩いた。 恋人たちを乗せた車のテールランプが、悲しみをあざわらうように過ぎていく。 浅田次郎さんの椿山課長の七日間より
ボロボロの軽トラックの表現 翠ちゃんが、どこかから車を借りてきてくれた。土に汚れた軽トラックは、中まで陽に焼けて、シートの表面がバサバサに乾き、座席のビニールが足元にぼろぼろこぼれていた。 「何、この車」 「借りた」 辻村深月さんのゼロ、ハチ…
急いでイグニッション・キーを回す。有難いことにエンジンはすぐに目を覚ました。 中山七里さんのヒートアップより 車のフロントガラスに雨滴がぶつかっては潰れ、ワイパーを動かす速度を上げるとガラスが甲高い音を立てて鳴き始める。中途半端だ。もっと激…