笑い顔、笑みの表現、描写を小説から学ぶ
女性は足を止めふわりと微笑んだ。えくぼができたその微笑みを見て、茉莉はまさかと目を見張った。 小坂流加さんの余命10年より
茉莉は口端を上げたまま眉を下げる。けれど桔梗の方は真面目な顔でダメよと繰り返した。 小坂流加さんの余命10年より
「見た……。ネコミミつけて漫画描いてた。かわいかったけど」 「そっかー。男のロマンだと思うんだけどな」 「ネコミミ?」 「ネコミミ」 茉莉がひくと、沙苗は鈴のような声で笑った。 小坂流加さんの余命10年より
「あは……ならもっと早く言ってくれれば……」 茉莉は口端を上げる。沙苗は見透かしたように片頬で笑った。 「茉莉は漫画研究会って嫌だったんだよね」 小坂流加さんの余命10年より
「そう。結婚して、元気な赤ちゃんを産まないと」静子は悪戯っぽく笑い、鼻の上に皺を作った。 東野圭吾さんのナミヤ雑貨店の奇蹟より
「お母さんによくいわれる。あなたがいると部屋が狭く感じるって」そういって静子は鼻の上に皺を作った。昔からの癖だ。 東野圭吾さんのナミヤ雑貨店の奇蹟より
小見浦は、それでようやく「劣等感」と一種の優越感とのバランスが取れたように、唇を捲り上げるようにして上の歯だけを見せて笑った。 平野啓一郎さんのある男より
気の抜けた炭酸水のボトルのキャップを回した時のような、力ない笑いが漏れた。 平野啓一郎さんのある男より
今度は、はっきり能面の口元が笑った。 横山秀夫さんの陰の季節より
「え、ほんと?」 マリアは、花開いたような笑顔になった。 原田マハさんのまぐだら屋のマリアより
「あの、近くに……ATMとか、ありますか」 とっさに言い繕った。ATMがあったところで、口座の残高は三百円かそこいらだ。東京を出るときに、母への最後の仕送りをすませ、手もとに残った三万円でどうにかここまでやってきたのだった。 くすぐったく笑う…
母の笑顔が目に浮かんだ。ほんとうに嬉しいとき、母は顔をくしゃくしゃにして、泣いているような笑い顔になる。その顔が見たくて紫紋はがんばってきた。 原田マハさんのまぐだら屋のマリアより
俺の足音に気づいたらしく、刑事はこちらを見た。それまでの厳しい表情が、まるで氷が溶けるみたいにほころんだ。 東野圭吾さんの同級生より
レイコさんは唇を横にひっぱるようにのばして笑った。 村上春樹さんのノルウェイの森より
彼女はほんの少し唇を曲げて微笑み、短い髪を手のひらで撫でた。 村上春樹さんのノルウェイの森より
「すいません。せっかくのお休みの日に……」 「あたしのことなら気にしないで。日曜だからといって、デートする相手がいるわけじゃないんだから」彼女の白い歯が光った。 東野圭吾さんの分身より
「この店はたしか」彼女は慎介の目を見つめた。「午前二時まで、だったわね」 「そうです」 「ふうん……」女の唇に意味ありげな笑みが滲んだ。 東野圭吾さんのダイイング・アイより
「いいね」慎介はいった。岡部は片方の頬だけで笑った。 東野圭吾さんのダイイング・アイより
自動販売機から紙コップを取り出す時、すぐそばにジーンズの足があることに気づいた。ゆっくりと目線を上げていくと麻由子が笑っていた。やや固さの感じられる、複雑な微笑みだった。 東野圭吾さんのパラレルワールド・ラブストーリーより
照れたように雅美も唇の間から歯を覗かせた。 東野圭吾さんのパラレルワールド・ラブストーリーより
「実家は新潟だっけ」 「そうよ。それもすごい田舎」鼻の上に皺を寄せて笑う。「あまりいいふらさないでね」 東野圭吾さんのパラレルワールド・ラブストーリーより
「研究室には馴れた?」考えた末、当たり障りのない質問をした。 「ええ、だいぶ」顔を上げ、目を三日月形に細めた。「忙しくて、無我夢中ですけど」 心の暗い部分を全く感じさせない、純粋な笑顔だった。 東野圭吾さんのパラレルワールド・ラブストーリーよ…
俺がいうと智彦は、こめかみのあたりを人差し指でちょいちょいと掻き、はにかむように歯を見せた。 東野圭吾さんのパラレルワールド・ラブストーリーより
「警視庁からの依頼です」薫はいった。「明日の朝早く、出来れば今夜から、私と一緒に行っていただきたいところがあります」 湯川が顔を上げた。唇の端に薄い笑みが滲んでいる。「デートの誘いか。場所は?」 東野圭吾さんの禁断の魔術より
その、とっかかりとやらの詳しい内容は聞かないほうがよさそうだと鵜飼は判断し、追従笑いだけをしておいた。 東野圭吾さんの禁断の魔術より
私は一瞬もおかずにうなずいた。その拍子に、もうひとつぶ涙がこぼれ落ちた。さっきとは違う、あたたかい涙だった。やわらかな微笑が、彼の頬にほっと浮かんだ。 原田マハさんの本日は、お日柄もよくより
「見ててくださいね。この選挙、必ず勝ちますよ」 久美さんを真似て、少し強気で言ってみた。たちまち、恵里ちゃんは花のような笑顔になった。 原田マハさんの本日は、お日柄もよくより
「このたびは、ご支援、ほんとうにありがとうございました」 母は、いつものように、つんと取りすました表情だったが、凜子の言葉にふっと笑みを口元に寄せた。そして、返したのだった。 「やったわね」 原田マハさんの総理の夫より
「連立政権樹立の暁には、ご実家のご援助、期待させていただきます」 ていねいに一礼すると、口の端を釣り上げて、にやりと笑った。 腹黒き黒幕の苦労人が、私の妻を総理に祭り上げたのは、それから三ヶ月後のことだった。 原田マハさんの総理の夫より
口の端を微妙に持ち上げてにやりと笑った。その笑い方は、ちょっと黒幕っぽい感じがして、再び私の興味を引きつけた。 原田マハさんの総理の夫より