一瞬、テーブルの周りの空気が、はっとした。会長の瞳の奥に、光がふっと揺らめくのが見えた。 原田マハさんの旅屋おかえりより

その目が、笑っている。風に撫でられた湖面のようにきらめいている。 原田マハさんの旅屋おかえりより

亡くなる直前に、私の手を握ってさびしげな色をたたえた瞳で、じっと私を見つめていた母。 原田マハさんのアノニムより

慎介は女の目を見た。妖艶な輝きを帯びた目が、見つめ返していた。ネコ科の肉食動物を思わせる危険な光も同居している。 東野圭吾さんのダイイング・アイより

やや茶色みを帯びた虹彩の中心にある瞳は、寸分のずれもなく彼の目を捉えていた。わずかに開かれた唇の隙間からは、濃厚な花の香りの吐息が漏れてきそうな気配があった。 東野圭吾さんのダイイング・アイより

「それは違うと思う」アーモンド型の目に、真剣な光が宿っていた。 東野圭吾さんのパラレルワールド・ラブストーリーより

「親友だよ」 俺がいうと、夏江はマンガの梟(ふくろう)みたいに目を丸くした。骨董品のような台詞を聞かされたと思っているのだろう。 東野圭吾さんのパラレルワールド・ラブストーリーより

鵜飼の細い目が、ほんの少しだけ見開かれた。 東野圭吾さんの禁断の魔術より

勝田さん、と矢場は酷薄な目つきで睨みつけてきた。 東野圭吾さんの禁断の魔術より

物理学者の目元が不快そうに曇った。 東野圭吾さんの禁断の魔術より

大賀の目に冷たい光が宿った。初めて見せる本当の表情だと草薙は感じた。 東野圭吾さんの禁断の魔術より

貯金箱の穴を思わせるような細い目で、鵜飼は草薙と間宮を交互に見た。 東野圭吾さんの禁断の魔術より

唇に笑みを浮かべているが、目には学者らしい冷徹そうな光が宿っていた。その視線を受け止め、中岡は瞬時に考えを巡らせた。 東野圭吾さんのラプラスの魔女より

「よかった。安心しました」桐宮玲は満足そうに頷いた。 少し目尻が下がっているので眠たそうな表情に見えるが、瞼を薄く開いた目には、冷徹に相手を観察するような光が宿っている。最初に会った時にも感じたことだが、油断のならない相手だ。 東野圭吾さん…

受け取った地図を円華は見つめた。ひっきりなしに動く目は真剣そのものだった。 東野圭吾さんの魔力の胎動より

目の奥に不気味な光を宿らせた人物だった。強く見つめられると、瞳の奥に吸い寄せられるような感覚があった。 東野圭吾さんの魔力の胎動より

「そうですね、またいつでも来られる。でも、次に来たときには、きっと、いまの私ではなくなっているはずです」 そう応える、織江は、ふっとさびしそうな瞳をした。 原田マハさんの楽園のカンヴァスより

少女は目を上げて織絵を見た。薄茶色の虹彩が展示室の照明を映してきらきらと耀いている。驚きも恐れもない、無表情な瞳だった。 原田マハさんの楽園のカンヴァスより

殺し屋稼業の似合いそうな鋭い目が糸のように細くなって垂れ、嬉しそうに顔をかがやかせた。犬なら間違いなく尻尾を振っているだろう。 名取佐和子さんのペンギン鉄道 なくしもの係より

女子高生の黒目がちな目に細い光の筋が走る。 名取佐和子さんのペンギン鉄道 なくしもの係より

琥珀色のハイボールを挟んで、雪子さんと満里子はじっと見つめ合う。お互いの瞳の奥にあるものを読み取るかのように、目を逸らそうとしない。 柚木麻子さんのあまからカルテットより

一重瞼の細い目に疑念と怒りの色が凝り固まって宿り、唇も油断なく締まっている。 横山秀夫さんのルパンの消息より

人の気配に顔を上げると、文芸部顧問の高柳修太郎先生が、銀縁眼鏡の奥の思慮深そうな目を細めて、こちらを覗き込んでいた。白髪まじりの髪がさらさらと柔らかそうだ。 柚木麻子さんの本屋さんのダイアナより

金色の透けるような髪、びっくりするほど小さな顔。大きな瞳は相手を吸い込むような深いはしばみ色で、長い睫毛がびっしり縁取っている。 柚木麻子さんの本屋さんのダイアナより

しばらく無言で見つめ合った。榊は瞬きすらせずにじっと視線を据えている。何の感情も窺わせないビー玉のような目をしていた。 薬丸岳さんの死命より

落ちくぼんだ眼窩の奥で、充血した目がぎょろりと動いて勇作を見下ろした。 東野圭吾さんの宿命より

意味もわからぬまま、岡村の象のような目が見る間に潤んだ。 浅田次郎さんの地下鉄に乗ってより

お時は扇のような睫(まつげ)をしばたたかせて真次を見上げた。 浅田次郎さんの地下鉄に乗ってより

いったい何を言おうとしたのか、黙って息子たちを睨みつけた父の、猛禽類のような目を真次は忘れない。それは冷ややかな、悲しみなどかけらもない、獣の目だった。 浅田次郎さんの地下鉄に乗ってより

清音は、湖面のように澄んだ瞳で父をみつめた。そして、そっと右手を差し出した。 原田マハさんのキネマの神様より