2021-06-27から1日間の記事一覧
赤い髪の青年はフニャッと力の抜けた笑顔を作った。 名取佐和子さんのペンギン鉄道 なくしもの係より
銀鼠色の海が間近に迫り、無機質でかっこいい造型のコンビナートから吐き出される白い煙は秋の曇り空の分厚い雲と混じり合っている。 名取佐和子さんのペンギン鉄道 なくしもの係より
銀鼠色の海が間近に迫り、無機質でかっこいい造型のコンビナートから吐き出される白い煙は秋の曇り空の分厚い雲と混じり合っている。 名取佐和子さんのペンギン鉄道 なくしもの係より
「おかえり」 やわらかな声が響いたかと思うと、引き戸の隙間から赤い髪が覗く。 名取佐和子さんのペンギン鉄道 なくしもの係より
窓にかかったカーテンの隙間からは、朝日の仄白(ほのじろ)い光が射し込んでいた。 名取佐和子さんのペンギン鉄道 なくしもの係より
錆やペンキの色剥げが目立つ観覧車のフレームを見上げ、響子は十三年分の時間を思う。二十歳の女の子が運命の恋に落ちて結婚してお母さんになる時間。猫の一生が過ぎ去ってしまう時間。 名取佐和子さんのペンギン鉄道 なくしもの係より
ペンギン鉄道 なくしもの係 作者:名取佐和子 幻冬舎 Amazon いーち、にー、さーん、しー、ごー、……とゆっくり十まで数えてから、笹生響子は文庫本から目をあげた。 「やっぱり、いる」 思わず口に出してつぶやいてしまう。 クーラーがほどよく効いた電車の中…