誰かの視線が自分のうなじを撫でた……そんな気配を感じたのは、自分の横を、すっと首をそむけるようにしながら追い抜いていった男がいたからだった。紺色のTシャツが目に留まった。 雫井脩介さんの犯人に告ぐ

相模原南署内で子供の死体が発見されたとの通報が発見されたとの通報が回ってきたのは、八時を過ぎた頃だった。巻島は胃に鈍い差し込みを覚えながら、本部の道場に泊まっていた部下の村瀬を現場に派遣した。 雫井脩介さんの犯人に告ぐ

「いずみに似てますよね」 彼は湿った声でそんなふうに言った。まったく頼りにならないタイプの男たが、憎めないところがある。 雫井脩介さんの犯人に告ぐ

桜川邸は高い塀が張り巡らされた、タイル張りの大きな家だった。表門は閉ざされ、車庫のシャッターも下りている。さながら要塞のような冷たい趣の邸宅である。 雫井脩介さんの犯人に告ぐ

桜川麻美は小柄で華奢な身体つきをした女たった。眼の下にはかすかな隈ができている。二十八歳らしいが、印象的にはよくも悪くも少女っぽい面影があり、誰かが支えてやらないと重責を果たせそうにないようなか弱さが確かに見受けられる。 雫井脩介さんの犯人…