直貴は何気なく例の黒髪の彼女を見た。すると向こうも彼のことを見ていたのだった。すぐに彼女は目をそらしたが宙で一瞬視線がぶつかったのは事実だった。 東野圭吾さんの手紙より

リンゴの味の表現 直貴はハンカチで手を拭いてからリンゴを摘まんだ。口に入れるとほんの少し塩味がして、かみ砕くと甘さが広がった。おいしい、と彼は素直に感想を述べた。 東野圭吾さんの手紙より

喫茶店で待っていたのは根津という人物だった。まだ三十代に入ったばかりに見えた。広い肩幅と尖った顎が印象的だった。口の周りに髭を生やしている。それが黒っぽい色のスーツとよく合っていた。 東野圭吾さんの手紙より

「そうだよ。ついにデビューだ。どういう形にしろ、祐輔だってそれは嬉しいだろ」 コータにいわれ、まあな、と寺尾も片頬だけで笑った。 東野圭吾さんの手紙より

とっつきにくい美人の表現、描写 直貴はどんな相手が現れようとも構わなかったが、五人の中に一人だけ、彼の心の奥にある何かに触れるものを持った女性がいた。背中まで伸ばした髪は黒く、服装も黒ずくめのその女性は、この催しにあまり乗り気ではない表情を…

お金持ちの家の室内の描写 リビングルームは二十畳ほどもあった。ダイニングテーブルが見当たらないから、食事をする部屋は別にあるのだろう。中央に大理石の巨大なテーブルがあり、それを囲むように革張りのソファが並んでいた。直貴は勧められるまま、真ん…