「博士の愛した数式 小川洋子」おすすめ小説を読もう
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おすすめ度☆☆☆☆
博士は交通事故に遭って記憶の蓄積は1975年で終わっていた。それ以降は記憶は積み重ねようとしても崩れてしまう。
80分前までしか記憶が持たない。なので、家政婦として働く「私」は、毎日博士の家に行く度に、博士の上着に貼ってある「私」の似顔絵と家政婦と書いたメモを指して自己紹介をする。
数学以外に興味を示さない博士だが、「私」の息子に対しては愛情を注いでくれた。
「子供をひとりぼっちにするのはかわいそうだ」と「私」のいる間は博士の家で過ごさせてもらった。
博士は息子を頭が平らだからルートと呼び可愛がってくれた。ルートに対しては惜しみ無く愛情を注いでくれた。「私」は、自分の息子を可愛がってくれることが嬉しかった。
徐々に博士の記憶の蓄積出来る時間が短くなり、ついに博士は施設に入ってしまう。そして、博士は「私」と「ルート」と過ごした記憶を全く無くなってしまった。
博士の頭の中では、今も江夏は阪神タイガースの不動のエース。トレードされた記憶も引退した記憶もない。
その部分も、阪神タイガースファンの私にとっては良かったです。
書き出し
彼のことを、私と息子は博士と呼んだ。そして博士は息子を、ルートと呼んだ。息子の頭のてっぺんが、ルート記号のように平らだったからだ。
「おお、なかなかこれは賢い心が詰まっていそうだ」
髪がくしゃくしゃになるのも構わず頭を撫で回しながら、博士は言った。友だちにからかわれるのも嫌がり、いつも帽子を被っていた息子は、警戒して首をすくめた。
「これを使えば、無限の数字にも、目に見えない数字にも、ちゃんとした身分を与えることができる」
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