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「博士の愛した数式 小川洋子」おすすめ小説を読もう

好きな小説

博士の愛した数式

おすすめ度☆☆☆☆

博士の愛した数式 小川洋子

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家政婦紹介組合からシングルマザーの「私」が派遣された先は、記憶が80分しか持たない元数学者「博士」の家だった。

博士は交通事故に遭って記憶の蓄積は1975年で終わっていた。それ以降は記憶は積み重ねようとしても崩れてしまう。

80分前までしか記憶が持たない。なので、家政婦として働く「私」は、毎日博士の家に行く度に、博士の上着に貼ってある「私」の似顔絵と家政婦と書いたメモを指して自己紹介をする。

数学以外に興味を示さない博士だが、「私」の息子に対しては愛情を注いでくれた。

「子供をひとりぼっちにするのはかわいそうだ」と「私」のいる間は博士の家で過ごさせてもらった。

博士は息子を頭が平らだからルートと呼び可愛がってくれた。ルートに対しては惜しみ無く愛情を注いでくれた。「私」は、自分の息子を可愛がってくれることが嬉しかった。

徐々に博士の記憶の蓄積出来る時間が短くなり、ついに博士は施設に入ってしまう。そして、博士は「私」と「ルート」と過ごした記憶を全く無くなってしまった。

80分しか記憶出来ない「博士」と主人公「私」と息子の「ルート」の生活に温かさを感じながら、博士の記憶が蓄積されないことで切ない気持ちになりました。ストーリーも面白く読みやすい小説で、あっという間に読めて、最後には、なぜか涙してしまうような、そんな作品でした。

博士とルートが阪神タイガースのファンで、博士は江夏のファン。

博士の頭の中では、今も江夏は阪神タイガースの不動のエース。トレードされた記憶も引退した記憶もない。

その部分も、阪神タイガースファンの私にとっては良かったです。

著者の小川洋子さんと私は同世代で、タイガースの試合のシーンは、私の記憶に残っています。

舞台は小川洋子さんの出身地岡山かなと野球観戦の話から推測しました。

書き出し

彼のことを、私と息子は博士と呼んだ。そして博士は息子を、ルートと呼んだ。息子の頭のてっぺんが、ルート記号のように平らだったからだ。

「おお、なかなかこれは賢い心が詰まっていそうだ」

髪がくしゃくしゃになるのも構わず頭を撫で回しながら、博士は言った。友だちにからかわれるのも嫌がり、いつも帽子を被っていた息子は、警戒して首をすくめた。

「これを使えば、無限の数字にも、目に見えない数字にも、ちゃんとした身分を与えることができる」

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