人の表現、描写
ガードレールに腰をおろした若者たちに向かって、貫井は訊ねた。鶏のとさかのような髪をかしげ、耳にぶら下げたピアスを振って、若者たちは笑い返した。 浅田次郎さんの鉄道員(ぽっぽや)より
浩子はそっと、ティーカップをソーサーに置いた。 「なんかね、ちょっと不思議なの」 シーソーのように、由可里がティーカップを手に取った。 朝井リョウさんの世にも奇妙な君物語より
緊張した様子が、やわらぐ表現 「そういえば、浩子さんはどんなお仕事されてるんですか?」 章大が、肉をがしゅがしゅと咀嚼しながら浩子を見る。章大は、ナイフで切り分けることもせずに肉を食べる。その少年のような姿に、固まりかけた空気が少し和らぐ。 …
首筋に楔(くさび)を打ち込まれるような衝撃を、泰造は感じた。視界に映る薄暗い景色が、ぐらりと揺らぎ、立ち並ぶ木々やミチオの顔が飴のようにひしゃげる。 道尾秀介さんの 向日葵の咲かない夏より 向日葵の咲かない夏posted with ヨメレバ道尾秀介 新潮社 …
会社勤めの母が家にいることに首をかしげてから、今日が日曜だということを思い出した。卒業してから、曜日の感覚がふやけたように曖昧になっている。 ビブリア古書堂の事件手帖より 「ええと……」優斗が救急車の天井を見上げる。混乱する記憶の中から、必死…