「わたしと南くん、もう駄目かもしれないわね」 蝋燭の火を吹き消すかのような、ひそやかな吐息だった。 凪良ゆうさんの流浪の月より
わたしと谷さんは並んで歩いた。ようやくやってきた夜と昼の名残が混ざり合っている街では、店も人もぼんやりとして見える。 凪良ゆうさんの流浪の月より
ふたつのグラスにウイスキーがそそがれる。水も氷も入れない。琥珀色の液体をそのまま透かすガラスに見とれた。理由のない乾杯をして、喉に流し込む。わたしの喉の形通りに流れ落ちていく熱が心地いい。飲み込んでしまったあとも豊かな香りが広がる。 凪良ゆ…
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