ため息の表現、描写をおすすめ小説から学ぶ
「わたしと南くん、もう駄目かもしれないわね」 蝋燭の火を吹き消すかのような、ひそやかな吐息だった。 凪良ゆうさんの流浪の月より
その徒労感は捜査本部全体に伝わり、まるでさざ波のように方々でため息が漏れた。 乃南アサさんの未練より
「それでって、だからさあ」 良江は口ごもった。つなぐ言葉を溜息にかえて、春の陽ざしの溢れる窓に目を向ける。 浅田次郎さんの鉄道員(ぽっぽや)より
丹羽は大声で笑い出したとたん、笑いきれずに切ない溜息をついた。 浅田次郎さんの日輪の遺産より
小泉は厚いメガネの底で目をつむり、体じゅうの空気を吐きつくすほどの溜息をついた。 浅田次郎さんの日輪の遺産より
言いながら、海老沢は体がしぼむような深い溜息をついた。これはどうやら、この男の癖であるらしい。 浅田次郎さんの日輪の遺産より
未央子は不完全燃焼の気持ちを乗せたようなため息とともに、冴えない相槌を打った。 雫井脩介さんの犯人に告ぐ
人生ってはかない。 伊吹先生そんなことまで教えてくれなくていいのに……。 私は夕暮れの通りを力なく眺めながら、緩慢にハンバーガーを食べた。自分の口をつく、ため息の味がした。 雫井脩介さんのクローズド・ノート
深いため息の表現 三木は静かにグラスを置くと、体中の空気を吐き出すようなため息をついた。 真山仁さんのそして星の輝く夜がくる
激しいため息の表現 発言を被せられたハルは、ゲリラ豪雨のような勢いでため息をついて、「それが言いたかったんだねーえ」と幼子をあやすみたいに言った。 朝井リョウさんのもう一度生まれるより
深いため息の表現 「あんたさえつかまれば、奥さんには何も言わない」 『あいつの取材、なかったことにしてよ』 その声に答えずに、待ち合わせの時間と場所を決めて電話を切る。背中が汗をかいていた。携帯をしまうとき、全身からの叫びであるように、深い息…
「まことにいいにくいのだがね、そういうことだよ。お兄さんの事件以後、君は幸せだったかね。いろいろと苦労したし、いやな目に遭ったんじゃないのか」 肯定するかわりに直貴は深呼吸を一つした。 東野圭吾さんの手紙より
「知らないんですか?」 「知っていないとまずいことですか?」 綾瀬が長々と嘆息をもらした。ゆっくりと頭を横に振り、大友の顔をちらりと見る。大友はそれで奇妙な不安を覚えた。警察が知らないことー そこに真実があるというのか? 堂場瞬一さんの高速の…