2020-10-03から1日間の記事一覧
庭らしき光景などどこにもない、ただ鬱蒼と生い茂る草むらがあり、小さな羽虫が陰気に飛び回っている。 雫井脩介さんの犯人に告ぐ
応対に出てきた桐生真砂子は、夜遅くにもかかわらず化粧を落とさず巻島たちの訪問を待ち受けていた。しかし、その顔に差している影は少しばかりの化粧で隠れる程度のものではなく、疲れが眼の下に浮いていた。 雫井脩介さんの犯人に告ぐ
おおかた話を聞き終えると、韮沢は腕を上げて軽く伸びをし、それから不意に愉快そうな笑い皺を目尻に刻んだ。 雫井脩介さんの犯人に告ぐ
夢の中で見た[ワシ]の横顔は記憶に定着しないまま、蒸発するように消え去っていた。 雫井脩介さんの犯人に告ぐ
座間は、愛想笑いにしては冴えない微苦笑を浮かべた。 雫井脩介さんの犯人に告ぐ
青山通り沿いに建つミヤコテレビドラマの新社屋は、通り沿いとはいいながらもずいぶん奥まったところにその威容を屹立させていた。エントランスの懐の深さは、ほかの高層ビルにもない、ある種の別世界ぶりを際立たせている。二十数階の高さを誇る建物は周囲…
間もなく、ロビー脇の階段からひょろりとした四十代半ばと見られる男が下りてきた。Tシャツの上に羽織ったジャケットの裾をひらつかせ、大股でロビーに入ってくる。 雫井脩介さんの犯人に告ぐ