見ず知らずの私を見上げたまま、屈託のない笑顔を浮かべた。 化粧っけは全くなく、肌はつやつやと黒光りし、私はふと、ラーメンにのせられている卵のしょうゆ漬けを思い出した。白髪交じりの長い髪は、二つに分けておさげに結ばれている。下にモンペのような…

「チュブ」 私もそう呼びながら、たるんだ顎の下を撫でた。チュブは長い舌を思いっきり外に垂らし、もっと撫でてくれと催促する。 小川糸さんのつるかめ助産院より

明るく元気な笑顔の表現 「ご迷惑になりませんか？」 彼女の顔色をうかがいながら、おそるおそるたずねてみると、 「とーんでもない！ ほら、冷めちゃうから早く行こう」 また、大輪のひまわりが咲いたように笑う。彼女が笑うと、地面の上に手足を投げ出し気…

歯のない老人の表現 長老がにっこり笑いながら私の顔をのぞき込んだ。その瞬間、思わず彼の口元に見入ってしまった。まるで顔の下の方にぽっかりと洞窟があるみたいに、ほとんどの歯が抜け落ちている。 小川糸さんのつるかめ助産院より

不安な気持ちの表現 今度は先生が私の顔をのぞき込む。底のない深い深い井戸の奥へ、生きたまま、ゆっくりと沈められていくようだった。光がとんどん小さくなり、遠ざかっていく。呼吸が苦しい。正直、戸惑いの方が大きくて、うれしさなんて微塵もない。 小…