2020-05-21から1日間の記事一覧
注意深くしている描写をおすすめ小説から学ぶ 子供ながらに背筋を伸ばし、周囲の様子を目の端で窺いながら、犬の前まで歩み寄ると、トレーナーの下から細長いパンを取り出し、ちぎって与え始めた。 湊かなえさんの告白より
「御苦労様。若いのにえらいわねえ」そういって小さな祝儀袋をくれた。後で見ると中には千円札が三枚入っていた。そんなにもらったのは、引っ越し屋の仕事を手伝うようになって初めてだった。 彼女の表情から何の邪念も感じられなかった。皺の一本一本にまで…
日中を表す表現をおすすめ小説から学ぶ アスファルトの路面に彼の短い影が落ちていた。正確な時刻はわからなかったが、たぶん午後三時頃だろうと見当をつけた。 東野圭吾さんの手紙より
疲れた顔の描写をおすすめ小説から学ぶ 剛志の頬はこけ、顎は尖っていた。焦げ茶色だった顔は、たったの十日間で灰色になっていた。眉の下に濃い影ができていて、その奥の目は下を向いていた。 東野圭吾さんの手紙より
絶望感の表現をおすすめ小説から学ぶ 絶望感が改めて直貴の胸に迫ってきた。何もかもが悪夢ではなく現実なのだと再認識させられた。この十日間、必死で現実を受け止めようと努力してきたつもりだったが、やはり心のどこかで「何かの間違い」を期待していたの…
悲しみがこみ上げる表現、描写を学ぶ 兄の顔を見た途端、直貴の感情が激しく波打った。胸にこみあげるものが、一気に彼の涙腺までも刺激した。こんなところで泣きたくない、という気持ちと共に、彼は言葉を放っていた。 「兄貴は馬鹿だっ。馬鹿なことしやが…