携帯電話が胸の中で鳴った。
こちらの声を待つ長い、暗い間は、妻からの連絡である。
「もしもし、どうした」
さらに一呼吸おいてから、妻の剣呑な声がした。
<どうしたって……あなた、今どこにいるの?>
タバコを喫うために病棟から出ると、冷たい夜であった。妻の声は昏れ残る雑木林の稜線を越えて、やっと届くほどに心細かった。
携帯電話が胸の中で鳴った。
こちらの声を待つ長い、暗い間は、妻からの連絡である。
「もしもし、どうした」
さらに一呼吸おいてから、妻の剣呑な声がした。
<どうしたって……あなた、今どこにいるの?>
タバコを喫うために病棟から出ると、冷たい夜であった。妻の声は昏れ残る雑木林の稜線を越えて、やっと届くほどに心細かった。