ようやく『緑岩荘』についた。西口も橋上と同様、とうに上着を脱いでいた。ワイシャツの腋は汗びっしょりだ。 宿の玄関を開け、「こんにちは」と声をかけた。エアコンで冷やされた空気が心地良い。 東野圭吾さんの真夏の方程式

島のパンフレットにのっている地図を広げ、気の向くままに足を進める。道の両側に、先端がススキの穂のようになっている背の高い植物がたくさん生えている。空気そのものがみっしりと濃密で、様々なスパイスが混ざったようだ。呼吸するたび、体がずっしりと…

湿度の高い暑い表現 時計を見ると、まもなく七時になろうとしていた。湿り気を帯びた大気が、半袖のシャツから出ている腕にまとわりつく。ひと雨くるな。そう思いながら、車のエンジンをかけた。 柚木裕子さんの最後の証人より

夏の暑さの表現をおすすめ小説から学ぶ 「防犯カメラのほかに、沖野さんが考えてる道筋はあるんですか？」 むっちりした身体に張りついたTシャツ一枚で椅子に腰かけた小田島が、昌子に麦茶を頼んでから、沖野にそんな問いかけを寄越した。 雫井脩介さんの検…

夏の風景の表現をおすすめ小説から学ぶ 事務所から浅草橋の駅まで歩くと、沖野の身体にも汗が浮いた。アスファルトが白く見える暑い夏の午後だった。蒲田に着いた頃には日もだいぶ傾いたが、やはり街を歩くとすぐに身体は汗ばんできた。 雫井脩介さんの検察…

真夏の太陽がアスファルトを焼き、生ゴミの腐敗臭を充満させている。 垣谷美雨さんのリセットより 相変わらず脳天を焦がしそうな暑さだ。じめりとして熱風が海の方角から吹いてきた。かすかに磯の匂いが漂っている気がする。 ビブリア古書堂の事件手帖より …