「あのなあ、お前に何がわかるっていうんだよ」 怒りの炎がゆらりと立ちのぼる。なんなんだよ一体。 坂木司さんのワーキング・ホリデーより

俺たちは二人で茜色の街に出た。夏の宵は風呂上がりのぬるさで肌にまとわりつく。 坂木司さんのワーキング・ホリデーより

事務所のデスクに腰をかがめていた人物が、ふっと腰を上げた。ごつい。ていうか顔はゴリラそのもの。しかも宅配の荷物で鍛えられた上半身は逆三角形で、腕なんざ丸太ほどもある。 (殴られたら死ぬよな、確実に) 俺はそいつのフランクフルトみたいな指を見つ…

「はよっす」 「今日も暑いねえ」 まんじゅうのような笑顔をふりまきながら着替えているこいつの名前は林。制服のストライプがおかしな曲線を描いているのは、太っているからだ。あだ名は「コブちゃん」。 坂木司さんのワーキング・ホリデーより

「はよっす」 「今日も暑いねえ」 まんじゅうのような笑顔をふりまきながら着替えているこいつの名前は林。制服のストライプがおかしな曲線を描いているのは、太っているからだ。あだ名は「コブちゃん」。 坂木司さんのワーキング・ホリデーより

階段を上がって店を出ると、夏特有のむっとする空気が肺になだれ込む。 坂木司さんのワーキング・ホリデーより