2020-11-21から1日間の記事一覧
早瀬は椅子の背もたれに身体を預けた。目の奥が鈍く痛み、首筋は強張っている。両腕を大きく上に伸ばすと、つい唸り声が漏れてしまった。 東野圭吾さんの夢幻花より
『伊庭医院』は、そんな住宅街の中にあった。灰色の四角い建物で、外から見たかぎりでは三階建てだった。道路に面した壁に「田」の字に見える窓が並んでいる。入り口のドアは木製で、真鍮製と思われるドアノブが付いていた。どう控えめにみても、五十年は経…
誰もいないと思ったが、ガラスケースの向こうに顔がひょいと現れた。白い頭巾を被ったおばさんだった。いらっしゃい、といって笑顔を作ると、顔中の皺が深くなった。 東野圭吾さんの夢幻花より
再び診察室のドアが開いて、白衣を着た男性が出てきた。白髪交じりのせいで灰色に見える長髪を、頭の後ろでしばっている。口の周りに生やした髭も同じ色をしていた。 東野圭吾さんの夢幻花より