風景の表現、描写を小説から学ぶ
東尋坊のバス停で降りたのは、細井一人だった。海岸の方からびゅっと風が吹きつけ、細井の体は吹き飛ばされそうになったが、足を踏んばり周囲を見廻した。 灰色の空に、暗い雲が垂れ込め、蒼黒い海に、荒々しい白波がたっていた。海岸に砂浜はなく、日本海の…
いつの間にか、外は真っ暗になり、灯台の灯りと、遥か彼方の光の帯のような熱海の煌めきが、一層、美しさをましていた。 山崎豊子さんの 沈まぬ太陽 会長室篇 下より 【中古】 沈まぬ太陽 5(会長室篇・下) / 山崎 豊子 / 新潮社 [単行本]【宅配便出荷】pos…
やがて夕陽が沈み、ほの暗い海の彼方に熱海の温泉街に林立するホテルの灯りが、色とりどりに煌めきはじめると、岩合は、 「今日は、大臣に社長の海野から大事なお話があるそうですので、私は甲板で夜釣りを楽しませて戴きます、鱸でも上がったら、あらいにし…
富士山は五合目まで、雪を頂き、広い裾野の稜線までくっきり浮かび上がっていた。 上京する新幹線の窓外に富士山の秀麗な山容が見えると、国見は、手にしていた西行の伝記から眼を離し、富士山を眺めた。 山崎豊子さんの沈まぬ太陽 会長室篇 上より 沈まぬ太…