沈黙の表現、描写をおすすめ小説から学ぶ
黙秘といった意思の介在とは無縁の、胎児の沈黙とでも呼ぶべき無垢な姿だった。 横山秀夫さんのルパンの消息より
真っ黒になったテレビが呼吸のような間合いで静まりかえり、部屋の空気がしんと落ち着く。 七月隆文さんのぼくは明日、昨日のきみとデートするより
会場は凪いだ海のようだった。その海に向かって深呼吸する思いで、瑶子は言葉をついだ。 原田マハさんの暗幕のゲルニカより
分厚い真綿布団の中に入って、目を閉じる。静まり返った水の底のような闇の中、鼓膜の奥に、介良男爵の言葉が禍々しく蘇る。 原田マハさんの奇跡の人より
だが心の中の天秤は、なかなか止まらないらしく、彼女は押し黙ったままだ。草薙はしびれをきらした。 東野圭吾さんの聖女の救済より
聞きたいことは山ほどある。話したいことだっててんこ盛りだ。けど、俺は心の筋肉で無理やり口をつぐんだ。 坂木司さんのワーキング・ホリデーより
警戒して沈黙する表現をおすすめ小説から学ぶ かすかな息遣いを残して、弓岡は沈黙した。 雫井脩介さんの検察側の罪人より
「あの……」半ば公然と疑いの目を向けられていることを知らされ、松倉はその声音に動揺をにじませた。「一つはっきりと申し上げたいんですがね、私がこの事件に関係してるなんてことは、これは天地神明に誓ってありませんから」 森崎がその言葉に対してうなず…
ドアが閉まると、二人だけの空間にぎこちない沈黙が漂った。秘書部、広報部の担当役員といっても、国見は、行天に心を許していなかったし、海野社長、三成副社長寄りの行天も、狭いエレベーターの中では、さすがに気詰まりであった。 山崎豊子さんの 沈まぬ…
「退院、おめでとうございます」 とりあえずそう口にした。 「……ありがとう、ございます」 彼女はうつむいたまま言った。お互い話の接ぎ穂を失って、沈黙が流れた。 三上延さんのビブリア古書堂の事件手帖より 坂口は彫像のように押し黙っていたが、やがて唇…